ESGreen Q&A | 環境設計やランドスケープに関わる研究開発企業 | 天然芝 屋上緑化システム | 海水化学工業株式会社
ESGreen Q&A - 環境設計やランドスケープに関わる研究開発企業 | 天然芝 屋上緑化システム | 海水化学工業株式会社

ESGreen Q&A

1. 省メンテナンス?
ESGreen-NEOでは、芝の均整化矮化現象を利用し、多数の実証試験の繰り返しにより、長期安定成育と均整化矮化被覆の最適域を見出しESGボードを産み出しました。
更に、難分解性の杉・桧樹皮発酵処理物と保水性火山砂礫等を用いることで、徒長を防ぐと共に、安定した成長と被覆を確保し、省メンテナンスを実現することができました。
省メンテナンス化は、芝面品質,繊密さ、擦り切れ・衰退防止、根詰まり・マット化(豆知識参照)による衰退の防止などの芝面の長期安定性、省エネルギー性、防水層劣化防止力の向上などと二律背反とも言える関係にあり、これを乗り越えるには、基礎理論、自然現象観察研究と実証試験によるイノベーションが必要でした。

《豆知識》馴化と均整化・矮化(順化、順応、ハードニング)

新グレードNEOは、なぜメンテナンス費用が軽減できるのでしょうか。
少し専門的になりますが、実は皆様が何気なく見ておられる植物生理の基本的な現象を利用したものなのです。

アスファルト目地の狭い間隙に、深く伸びた根に喰いこんで、そのまわりのアスファルトの表面に見事に被覆を拡げてゆくコウライ芝は、実にたくましく、しかも矮化(直立茎や葉が短く、節間も小さくなる現象)して、刈り込みの必要もなくなって、長期にわたり密に被覆ができています。

コウライ芝は、狭い間隙から吸収した水や養分を、アスファルトやコンクリート面の被覆拡大部に供給し、全体として(均整化)形を矮化することで、厳しい環境に耐えながらも、被覆を拡大してゆくのです。
植物の馴化現象とは、乾燥、低養分、高低温、塩類濃度、踏圧、低日照などの環境ストレスに対して、植物が生存をかけて変化してゆくことです。馴化とは、「悪環境に移されることによって鈍った活動を改善するような変化」を意味し、移動の出来ない植物にとって非常に大きい要素です。

馴化は、コウライ芝で見られる矮化(形態的変化)もその一つで、一方環境ストレスに応答して、適合溶質と呼ばれるストレス耐性を強化する組織内物質の産出や、植物ホルモン組成の変更も馴化現象です。このような現象は、広く植物全般で見られるものです。
しかし、急激な落差の大きいストレスでは、植物は応答しきれず、衰退してしまうことが多いのです。

「ストレスの影響を最小限にとどめて生命を維持するような諸反応、すなわち短期的には代謝過程、長期的には形態の変化などを誘発する。特に、水不足、栄養塩や酸素の欠乏は、同化産物の分配、シュートと根の成長の比率の変化などをもたらし、ストレスには,個体全体が応答する」とされています。

ESGreen-NEOグレードの開発に当たっては、低メンテナンス状態での耐性を付与する方法について検討を重ね、植生基盤の深い「根域確保部」(生育安定化部)いわば「基地」部と,植生基盤が薄く、平坦な「被覆拡大部」いわば制空権域を適度な比率で併存させ、馴化,均整化を起こさせます。
芝の全体的被覆を確保しつつ、適度な矮化を起こさせることで、刈り込み、施肥、灌水量等を低減させることができる構造となっています。また、静菌力を持った、難分解性植生基盤材と有用微生物の組み合わせも含めて開発、実証試験に成功し、ESGreenシステムの新グレードとして発売したものです。
(*1)W.Lancher, 佐伯敏郎, 「生物生態生理学」p233~, シュプリンガー・フェアラーク東京㈱(1999)
(*2)種生物学会, 村岡・可知編, 「光と水と植物のかたち(植物生理生態学入門)」㈱文一総合出版, p19~(2003)他
(*3)上記の「低メンテナンス化」とは、馴化現象を利用した矮化による刈込回数低下が主たる内容です。中矮性種スクラムとの組み合わせで、年3回前後の刈込で済みます。

《豆知識》根詰まり、マット化

根やほふく茎が、過度に密集し、新しい根やほふく茎の成長が阻害され、被覆が衰退してゆくこと。

野菜づくりと同じ様な感覚で、過剰な養分や過度の成長促進成分を有した植生基盤を用いて、根や葉やほふく茎を急速且つ過度に成長させたり(「徒長」)植生基盤が薄すぎ(例えば、30mm以下)たりすると、植生基盤内に根やほふく茎が密集し、その為,継続的な根やほふく茎の発生、成長が阻害され、衰退して、被覆率が低下してゆき、雑草も繁茂しやすくなります。

一旦、このような状態になると、平地の場合は,コアリング(穴開け)、バーティカルカット(切り刻み、間引き)、スパイキングなどの更新作業によって改善できますが、屋上では、不可能です。従って、回復の方法がありません。

この為、ESGreen-NEOでは、
①更新成長確保部分と、ストレスのかかったほふく茎展開部分を分け、適切な比率とし、均整化・矮化により、過度の成長を抑えつつ、被覆密度を向上維持させる
②難分解性植生基盤を用い、過剰養分状態にならないようにする(養分の安定化)工夫により根詰まり・マット化を予防しています。
なお、中長期にわたり、有機成分の分解による植生基盤の減容は生じますが、その際には軽量目砂を補充してやると、新しいほふく茎・直立茎の発生・伸長を含め活性化が可能です。

2. 長期安定・低メンテナンスシステム?
ESGreen-NEOは,植物生理(馴化・均整化・重力屈性現象:「豆知識」参照)をもとに設計され、実証されたESGボードの構造及びESGソイルの組成により、メンテナンスの低減と、植生の長期安定性を同時に実現した画期的システムです。
徒らな成長よりも、安定を重視したシステムで、それだけメンテナンス負担も軽くなります。
屋上緑化システムの中には、施工直後の見栄えを良くする為、初期(1~3年)の成長性に力点が置かれ、長期的視点に欠けたものなど様々な問題を含んだシステムが多く見られます。これらは一様に植物生理の知識の欠如や実証試験の仕方に問題があると言わざるを得ません。
また、畑での野菜づくりと、屋上での芝づくりは、植物生理、目的からして根本的に異なっています。短期的成長に主眼が置かれたシステムでは、初期の1~2年は「徒長」を生じ、刈り込みなどメンテナンスが頻繁に必要となるばかりでなく、植物は「軟弱化」し、反面初期植生基盤中の水溶性養分が溶けだしてしまった後は、急激な貧土となり、急激な衰退を余儀なくされてしまいます。このため、ESGreen-NEOシステムでは、難分解性の杉・桧樹皮発酵処理物と保水性火山砂礫と根圏微生物を組み合わせ、徒長を防ぎ、且つ矮化・均整化現象による安定した被覆を実現しています。

《豆知識》軟弱化

植物は、過養分状態,殊に窒素が過多になると徒長すると共に細胞質内の必須成分濃度が薄くなり、乾燥,高温などの環境ストレスに適応しにくくなる。これを軟弱化という。
また、植物でもほとんどストレスが無いと、ストレスに対する抵抗性が弱くなる。〔逆に、継続した適度なストレスは順化(ハードニング)をもたらす。〕

「軟弱化」は、直立茎や葉の成長が極端に促進され、シュートや葉の力学的支持組織は貧弱となり、気候的ストレスに弱くなり、病原性のあるカビと害虫とに対する感受性が高まる(被害を受け易くなる)。
逆に適度なストレスを加え続けることによって植物は外部からのストレスに強くなる。
(*)W.Larcher, 佐伯敏郎, 「植物生態生理学」,p130~, シュプリンガー・フェアラーク東京(1999)他

3. ESGreen-NEOのメンテナンス?
ESGreen-NEOは、匍匐型芝の安定的生育を強く意識して開発されたESGreen屋上緑化システムの新グレードです。
ESGreen-NEOは、芝の順応化現象を利用した新しいコンセプトの屋上緑化新グレードです。

ESGreen-NEOが、いくら”低メンテナンス”だといってもやはり、”生き物”の良さを享受する為には、最低限のメンテナンスは必要です。

ⅰ)給水

生き物にとって最も重要な「水」の供給は不可欠です。

蒸散力が極めて低く、省エネルギーや温熱環境改善に必要な「気化熱潜熱冷却効果」の殆ど無い、セダムや苔で、灌水不要と主張しているシステムもあるようですが、東京都環境研究所他のレポートでも明らかなように、水を供給しないで、省エネ、温熱環境改善は限界的です。
また、美観上も、中長期的に見ると、天水のみで水供給なしでは、維持できません。

一方、土壌層を厚くしたり、貯水トレーを組み合わせたりして、無灌水を謳っているシステムもありますが、屋上緑化が中長期的(30~40年)な維持が期待され、年によっては長期の旱魃もあり植物の荒廃につながる例も多いことから,おすすめはできません。
これでは、折角の投資が本も子もないことになってしまいます。
やはり芝面は緻密で美しい状態を保ちたいものです。

当社では、原則として、自動給水システムの設置をお奨めしています。
予算や面積、構造、現場事情などに応じた各種の自動給水システムを用意しています。
冬の緑(緑生葉)維持を期待するには、特に月間降雨量が少なく、相対湿度も低い(土壌が乾燥しやすい)12~2月は、氷点下時、霜柱発生期を除き、適度な散水は生葉・緑度維持に不可欠です。(従来は、「コウライ芝の葉が枯れている時は、散水不可」と言っていましたが。)

ⅱ)刈り込み

初期生長だけを重視した過剰な養分・有機分を含むシステムでは、徒長が生じ、頻繁な刈り込みをしないと芝面が維持できず、往々にして軸刈り(豆知識参照)が生じ芝面を荒廃させてしまいます。

ESGreen-NEOは、芝が順応現象により、矮化、緻密化してゆくように設計されています。
初年度は、芝の早期活着の為に必要な肥料分を土壌に混合してある為、従来の方法と極端な差は出ず、次年度では約3割程度(10回/年を7回/年程度)の矮化となります。
矮性の芝を利用すれば、さらに刈り込み回数を減少できます。

ⅲ)施肥

ESGreen-NEOでは、スクラムによる冬の緑生葉の維持も意識して、安定施肥(標準苦土化成8-8-8-3 20~30g/㎡・月)が原則です。)
緩効性肥料の使用による省管理も可能ですが、条件(特に、踏圧条件・気象条件等)によっても異なりますので、初年度の状況を見つつ、適切な施肥管理を相談させて下さい。

初年度は芝の早期活着のために必要な肥料分を土壌に混合してありますので、使用条件にもよりますが、春施工の場合追肥は1回(秋口)程度で充分です。
2年目からも、1回/年(春)、コーティング肥料(緩効性徐放性)を施すだけで充分です。(特に厚めのターフをつくりたい場合は施肥回数を増やすこともあります。)

ⅳ)殺菌

ESGreen-NEOは、静菌効果をもつ杉・桧樹皮と、弱い殺菌効果を持つとされる弱酸性の火山砂礫を配合しています。スクラム芝の病害虫耐性は、ノシバや洋シバに比して強く、従来のコウライ芝と同等です。
異常にお気づきの際は、ご遠慮なく早めに当社または地元造園業者の方にご相談ください。
また、芝に一定のストレスがかかるようにしてあるため、2年目以降はストレスに対して、芝自体のストレス対抗力が上がり、病害菌に侵されにくくなります。

ⅴ)殺虫

屋上緑化では、芝の害虫被害は殆どありません。(購入された芝に、芝圃場から持ち込まれた害虫の幼虫や卵が入っていることも稀にはありますが、この場合は、施工してから、芝ソッド間の目地が詰まって芝面が使用可能となる2~3ヶ月の間に殺虫剤を散布します。メンテナンスを委託される造園業者またはお近くのガーデニング店にご相談下さい。)

ⅵ)目砂

コウライ芝をはじめとする匍匐型の日本芝は、新しい匍匐茎の節や直立茎の節群から、新しい直立茎、匍匐茎及び新根が発生、伸長して更新し、芝面を維持します。よりフレッシュな根茎群を常に維持し、保護するためには、適度な(5㎜前後の)軽量目砂を年々供給してやることが大切です。目砂はまた、枯葉や古い匍匐茎の分解にも有効です。
ESGreen-NEOでは、難分解性の専用土壌(ESGソイル)を用いています。
ESGソイルは、難分解性の杉・桧樹皮醗酵処理材と保水性火山砂礫を主成分としています。保水性火山砂礫は適度な保水・透水性、通気性を与えると共に、踏圧に対する抵抗性(保形性と踏み心地)を与えています。
難分解性の杉・桧樹皮醗酵処理材は、徐々に徐々に分解しつつ、植物の生存に必要な腐植と言われる植物成長因子を放出し、芝の健全性をサポートします。
このため、長年の間には,土壌層は徐々に減容してゆきます。
従って、土壌重量が、初期の重さを越えない範囲で地域にもよりますが、目砂(5㎜厚さ/年)を用いると、新しいほふく茎の成長を促し、より美しく、平坦な芝面が維持できます。

ESGreen-NEOでは、杉・檜樹皮醗酵処理材(樹皮のうち,発酵・分解し易い部分を、2~3年かけて分解した残りの部分)を用いています。
杉・檜樹皮は、難分解性材料として古くから使われてきましたが、静菌力も有していることが特徴です。

《豆知識》〔軸刈り〕

肥料分が多すぎ、直立茎の伸びを放置し、およそ7cmを越えふわふわになるところ迄になってから、一気に2~3cmに刈り込みを行うと、直立茎の成長点を全て刈り取り、再生が難しくなって芝面が荒廃してしまうことがあり、これを軸刈りと言います。

軸刈りを防ぐには、徒長させないことが第一です。安全のためには、地上部長(草丈)の2/3のところで刈り込む(2/3ルール)のが一般的です。
頻繁に刈り込みを行えば良いのですが、メンテナンスの手間、コストが大変です。
このため、ESGreen-NEOでは、芝に適度の生育ストレスがかかるように配慮されており、これによりストレス順応矮化を生じさせ、徒長を抑制し、刈り込み、施肥、水量を減らしてゆけるようにしています。
刈り込み高さは、通常20~30mmの間で管理することが望ましいことです。

《豆知識》〔難分解性植物由来植生基盤〕

杉・檜樹皮や、ヤシ殻や、松樹皮などは、湿潤状態でも分解されにくいことが特徴です。
その為、長期にわたり保型性を維持します。
「難分解」とは、裏を返せば、「徐々には分解が進む」ということです。
このため、徐々に分解して、腐植酸等の成分を少しずつ生成してゆきます。
腐植酸は、保肥力を大幅に高め、また、植物の生長に好影響を与える成分です。
このため、あまりに急激な成長(徒長)を来たさず、芝を健全に保ち、刈り込みの回数が減ると共に、長期的にも安定した生育が可能となるのです。

4. 耐塩性?
海岸から,数Kmしか離れていないような場所では,耐塩性も考慮しておく必要があります。
暖地型芝,殊に,東洋シバと呼ばれるコウライ芝(コウシュンシバ),ノシバなどは,優れた耐塩性を示します。
変異・ハイブリッド緻密鮮緑コウライ芝スクラムは、耐海水試験でも良好な結果が得られています。

表1.20種々の塩類濃度で生育させた芝草の生存率(%)

耐塩性表
〔浅野義人, 青木孝一, 「芝草と品種」, ㈱ソフトサイエンス社(平成10年)より引用〕

5. 海水化学工業(KaiSui)の芝技術
海水化学工業㈱では、昭和63年より、芝技術開発に取り組んできました。
当社の芝関連技術は、①新品種開発、②芝生理研究、③土壌改良研究、④微生物利用研究、⑤施工技術研究など多分野にわたっています。

①新品種開発

当社では、独自先端技術にこだわって、バイオテクノロジーを駆使した他に真似のできない開発を進めてきました。
組織培養技術(世界唯一のゾイシア属苗条原基細胞の実現や、砂漠緑化を念頭にタンク内で、芝苗を急速増殖させる液体培養技術など)、多重人工変異技術、遺伝子導入技術など、全て頭に「独自の」が付く技術です。
当社の新品種は世界ではじめて芝類で米国特許(USP)を取得した技術をもとに開発されています(日本、米国、豪州特許)。
国内でも、3品種が品種登録され、殊にスクラムはその品質が認められて、校庭緑化,高規格グラウンド、屋上緑化などに使用されています。
高緻密鮮緑常緑性コウライ芝スクラムは、短節間多分げつ性で、葉面にアントシアニン(赤紫色)蓄積の無い(紅葉しない)ことを特長とする高品位用途に適した新品種です。
更に当社の提案が採択され、国家戦略プロジェクト(ミレニアムプロジェクト)受託研究にも参画し、強い耐乾燥性のコウライ芝系統(遺伝子組替え)の開発に成功しています。

②芝生理研究

50年前にはじめた直営ゴルフ場での経験をもとに芝のメンテナンス技術ノウハウを積み重ね、特に東洋シバについては、独自のノウハウを有しています。
ここ10年ほどは、東洋シバの環境ストレス下における馴化能力に着目し、実証的な研究をつづけてきました。
芝(コプロス)→ESGreen→ESGreen-Rfと続いてきた屋上緑化関連の開発、実績と基礎的な研究に、数多くの実証試験を経て完成したのが、ESGreen-NEOです。
(当社スクラム芝やティフトン,パスパラムと,ESGreen等3種類の屋上緑化システムの組み合わせで,中東地区気象での生理評価実験なども実施しています。
幸い、スクラム芝とESGreenシステムの組合せが高温、少潅水条件で最も良いとの結果が得られています。)

③土壌改良研究

KaiSui土改システムは,平成5年より公園(樹木、芝,花壇等)を中心に数多くの実績を残してきました。
現土分析や地域気象、適用植物種、使い方等を基に都度土壌設計を行う形で進めてきました。
古くは、平成9年、日本オープンゴルフ選手権の新グリーンの土壌設計と納入や山口きらら博覧会場の土壌設計は好評を得、その他目的に応じた土壌改良を提案実施してきました。
今回のESGreen-NEOの開発にも役立っています。

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